マーケティングオートメーションでよく利用される用語を解説しています。
ABM(アカウントベースドマーケティング)
ABM(Account Based Marketing)は、自社にとって価値の高い顧客(アカウント: 企業)を定義し、ターゲット化した企業からの売上最大化を狙うマーケティング手法です。対象となる企業は大口顧客となる場合が多く、複数の部門で連携し、全社的なアプローチを行います。
例えば、営業部でアプローチに苦戦していた顧客が、実は隣の事業部の得意先であることに気付くことができます。顧客を点ではなく面で捉えることによるビジネスの機会損失を防ぐことができます。
ABテスト
ABテストとは、同数の異なるユーザーにそれぞれ別の情報を提示し、その効果を比較することで、より高いコンバージョン率(最終的な成果に至った割合)を得ることができる施策を見極めるための手法です。
例えば、Aパターン: 現在表示を予定している情報と、Bパターン: その情報に変更を加えたものを用意し、本格的に展開する前のテスト検証として利用されます。これらの比較対象物は、サイトの機能やコンテンツだけでなく、画像の大きさや配置、全体構成などの視覚的や要素、ボタンの色や文言などの要素を変化させることにより、サイト構成を最適化します。
HTMLメール
HTMLメールとは、HTML言語により作成された電子メールです。Webサイトのように、文字の色やフォント、全体構成などを工夫したり、本文へ画像や動画の挿入ができるため、読者への視覚的な訴求に適しています。単純な文字だけで構成されるテキストメールと比較した優位性といえます。
例えば、米国のソフトウェア会社Vero社が実施したメルマガに関するキャンペーンの調査結果によると、画像ありのメルマガは、画像がないものよりも、メルマガのクリック率が5割近くも高いことが分かっています。
メール開封率
メール開封率とは、メールが実際に届いた読者のうち、それを開封した読者の割合を表す定量的な指標です 。メールを配信し、読者がメールに記載されたURLをクリックして、遷移した先で資料請求や問い合わせなどのアクションを起こすことを期待します。メールの開封率を高めるには、タイトルや配信時間、差出人名などを改善し、その結果を分析することが重要です。
例えば、Eメールマーケティングメトリクスレポートによると、開封率が高い傾向にあるのは、配信日が火曜と水曜の場合、配信時間が早朝朝や夕方が良いという結果が出ています。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーは、ユーザーの行動を時系列で把握するためのフレームワークです。ペルソナを設定し、そのユーザーが商品・サービスを認知してから購買・利用に至るまでの行動を理解すことで、企業が意図した行動をユーザーが経験できているか、ユーザーにより良い経験をもたらすためにはどうすれば良いかなどを検討するために役立ちます。
例えば、ペルソナの動きを図示化したものとして、カスタマージャーニーマップが有名です。これはユーザーとの接点、体験、心理的変化を時系列に沿って整理する目的に加えて、社内やクライアントなどのステークホルダーと顧客視点を共有する目的としても利用されます。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、潜在顧客にとって質の高いコンテンツを継続して発信することで、ターゲットとなるユーザーの興味・関心を考え、価値のあるコンテンツを用意することで、ユーザーが情報を必要とするタイミングでコンテンツに辿り着くことができ、見込み顧客として定着する可能性が高まります。
例えば、SNS上でコンテンツを発信すると、Instagramの投稿に対するコメント、Twitterのリツイートなどの読者からのフィードバックを得ることができます。良質なコンテンツであれは、読者の「誰かに伝えたい、シェアしたい」という気持ちを呼び起こすというメリットがあります。
CRM
CRM(Customer Relationship Management: 顧客関係管理)は、顧客の行動データに基づき、顧客の興味関心を把握し、適切な情報提供を行うことで、顧客と深い関係を築くマーケティング手法のことです。CRMの目的は、1人ひとりの顧客への情報提供を継続的に行うことで顧客満足度を高め、顧客生涯価値(顧客が生涯にわたってもたらす利益)を最大化することにあります。
例えば、誕生日などのライフイベントやGWなどの長期休暇に合わせて、顧客へ割引クーポンを配信し、製品やサービスへの購買意欲を高めることができます。
スコアリング
スコアリングとは、顧客を個人情報や行動情報に基づき点数化することで、自社製品との相性や顧客の関心領域などを分析することで、見込み客を絞り込み、営業効率を高める機能です。米国の営業支援コンサルティング会社RAIN Groupのレポートでは、自然検索やリスティング広告などにより新規で入ってくる見込み客のうち、既に購入の意思があるのは25%未満です。残り75%の見込み客には継続して情報提供を行うことで購入意欲を高めてもらう必要があります。
例えば、「顧客の年齢、性別、趣味、嗜好などの個人情報:1点、購入、利用履歴、購入動機などの購買情報:2点、苦情、意見、要望などの企業への問い合わせ履歴:3点」のようにスコアリングモデルを設定し、ユーザーごとの点数によって顧客層別、顧客別の需要と購買行動を分析して、個客に最適な対応(情報送信)をすることができます。
ステップメール
ステップメールとは、資料のダウンロードや配信メールの開封など「特定のアクション」を実行したユーザーに対して、あらかじめ作成しておいたメールを一定期間自動的に送るメールです。ユーザー行動に基づいて最適なタイミングで、最適な情報を配信することにより、販促に繋げることができます。
たとえば、デジタルカメラを購入したユーザーに対して、商品購入日に御礼メールを、商品配送日に、交換レンズ、フィルムなどの関連商品に関する情報を段階的に送信するといった方法があります。
SFA
SFA(Sales Force Automation: 営業支援システム)は、営業活動で生じる様々な情報をデータ化・蓄積し、効果を測定・分析するためのソフトウェアです。営業が管理すべき情報は、主に顧客に関する情報(担当者名や企業情報など)と案件に関する情報(交渉の進歩情報や営業担当者の行動予定表など)があります。これらの情報を属人化することなく可視化し共有することが役割です。
例えば、提案書作成や交渉の記録、営業担当者の行動予定表などの営業フェーズをシステムで一元的に管理することができます。
トリガー
トリガーとは、ユーザーの行動を駆り立てるきっかけのことです。トリガーには2種類あり、テレビやインターネット広告、口コミ、SNS投稿などの外部から得た情報がもとで行動する「外的トリガー」と、特に意識せずとも気付いたらサイトを利用しているというような内的な感情がもとで行動する「内的トリガー」があります。顧客と中長期的な関係を築くためには、外的トリガー及び内的トリガーの両方を意識してマーケティング活動を行う必要があります。
例えば、中国の大手EC企業アリババによる「独身の日」セールでは、独身の利用者を中心に、毎年記録的な売上を達成しています。また、普段は過去の購買履歴をもとに顧客が好む商品を分析し、そのお客様の興味・関心がありそうな情報を提示する機能も役立っています。
ランディングページ
ランディングページ(LP)は、Webサイトの訪問者が最初に訪れるページです。一般的な意味のLPは、Webサイトにおけるトップページや商品説明に関するページなどであり、自然検索による通常の流入経路によるものです。一方で、マーケティング活動における狭義のLPは、問い合わせ、リスティング広告やイベントの参加予約など、顧客の消費行動を誘導しアクションに繋げることを目的としたページです。
例えば、ユーザーが検索したキーワード(検索語句)と関連度の高い情報を表示するリスティング広告は、検索エンジンの上位などの目に付きやすい場所に表示され、顧客の商品への興味関心を喚起し、遷移先のページで成約まで繋げます。
リード
リードは、マーケティング活動によって獲得した見込み客のことです。ウェブサイトに訪れた来訪者は、メルマガ配信やセミナー来場、Webサイトからの資料請求などを通じて、名前や連絡先がわかるリードとなります。リードとなった顧客は、個別のコミュニケーション手段を得た状態であるため、パーソナライズされたマーケティング対応が可能になります。
一般的には、リードとして獲得した顧客は、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションを経て営業部門に引き渡すという流れがですが、誰だか分からない状態の顧客に対して役立つコンテンツを継続して発信する「コンテンツマーケティング」を行うことでいかにリードへ繋げることも重要となります。
リードジェネレーション
リードジェネレーションは、見込み顧客を獲得する活動です。見込み顧客とは自社の商品・サービスを何らかの形で自社の製品に興味を持ったお客様を指します。リードジェネレーション(顧客の獲得)は、その後のプロセスである顧客の育成、選別、営業担当者による商談成立に繋げるためのファーストステップとなります。
近年、InstagramやTwitterなどのSNSからのアクセスが大きな役割を果たしています。SEOやリスティング広告と比較して、SNSは情報の拡散力や拡散スピードの面で大きな強みを有します。また、既存顧客への継続的なPR施策としても有効です。
リードナーチャリング
リードナーチャリングは、見込み顧客を育成する活動です。連絡先を獲得した見込み顧客に対して、SNSやメール配信等による情報提供を段階的に行うことで、徐々に購入意欲を高め、成約の見込みの高い顧客に育てます。
例えば、顧客の行動履歴を分析し、見込顧客に表示するコンテンツを、検索ワードごとに最適なものへと自動で差し替えるものがあります。新規訪問ならポップアップでクーポンを表示し、既存顧客なら訪問の御礼のメッセージを表示するなど、パーソナライズされたコンテンツ、動線を準備することで、顧客エンゲージメントを高めることができます。
リードクオリフィケーション
リードクオリフィケーションは見込み顧客を選別する活動です。購買意欲の高い顧客を絞り込むことで、次のフェーズである営業担当者による商談成立に繋げることが目的となります。
例えば、送信メールの開封状況やメールに記載したURLのクリック状況に応じて自動的に顧客をスコアリング(点数付け、評価)し、それぞれの顧客のスコアに応じて、対応を変えることで顧客を育成しながら、エンゲージメント(購買意欲と企業・製品への関心を含めた概念)を高まった状態で見込み客を絞り込みます。
インサイドセールス
インサイドセールスは、電話やメール、Web会議システムなどの非対面のコミュニケーション手法による営業活動です。マーケティング活動にて獲得した見込み顧客へのアプローチ、成約の可能性の高い顧客を選別し適切なタイミングで商談を設定します。また、見込みの低い顧客へは成約の可能性が高まるまで継続しフォローを行います。これにより、営業担当者の業務を減らし、提案からクロージングまでの業務に集中してもらうことができ、営業効率や売上向上に繋がります。
例えば、ある企業では、受注までに平均3回の訪問と電話によるフォローが必要だったところから、最初の数回の訪問を共有資料による商談に置き換え、電話によるフォローも画面でお客様の顔を見ながら丁寧にコミュニケーションをとることで、見込み顧客への育成を効率化することができています。
フィールドセールス
フィールドセールスは、インサイドセールスによって得られた顧客情報を引継ぎ、顧客の元へ直接訪問し、商談提案・成約に繋げる役割を担う外勤型の営業です。インサイドセールスとの分業により、営業プロセス全体の効率化を狙えます。
例えば、5名のフィールドセールスが全ての営業活動を担い1人当たり1億円の売上を計上しているとします。そこに、インサイドセールス担当者が2名加入すると、営業担当者の人数は増加しますが、分業によって営業担当者の生産性を向上させることができます。仮に1人当たり売上が50%上がるとすると1.5億円となり、計7人で1億円超の売上を計上できるようになります。
休眠顧客
メールマガジンなどを送っても反応がない状態が長期間続くリードを休眠顧客(休眠リード)と呼びます。無反応のリードは休眠顧客として区別し、反応のあるリードへの情報提供を行うのが得策といえます。
一方で、無反応のリードに対して一方的なコミュニケーションを続けても無意味ですが、休眠顧客として扱う前に、連絡の方法やタイミングにより関係を回復できる場合があります。例えば、展示会の出展時や季節の変わり目などの特別なタイミングで連絡し、顧客の反応をみるという方法です。優先順位としては高くはないですが、顧客獲得手段のひとつです。
シナリオ
シナリオとは、個々の顧客に対して取るべきアクションを仕組み化し、マーケティングを自動化するためのスクリプト(台本)です。具体的には、施策の対象や目的、内容、数値目標などを定め、見込み客への情報提供を、適切なタイミングや適切な媒体で行うことで、育成を効率化することが目的となります。
例えば、メールを開封したユーザーに対しては、詳細を記載した資料やサイトのURLを送り、メールを開かなかったユーザーには、前回送ったメールとは違うアプローチでメールを送信するというようなシナリオを設計するパターンがあります。